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2009/03/01 UPDATE

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INDEX 阿佐ヶ谷スパイダースのもうひとつの入り口。SPIDERS INDEX #005福澤諭志×二村周作×長塚圭史

福澤諭志×二村周作×長塚圭史
『About the Anti clockwise Wonderland』

東京公演も千秋楽を迎え、残すところあとわずかとなった『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』。
俳優と装置との関係性が非常に重要だったこの作品で舞台美術を担当した二村周作さんと、ともにたくさんの作品を作り続けてきた、阿佐ヶ谷スパイダースにとってなくてはならない存在の舞台監督、福澤諭志さんのおふたりを、長塚圭史が迎え、今回の新しい試みについて語った。

本公演にまつわる対談シリーズ。バックナンバーはこちらから。
SPIDERS INDEX#003中山祐一朗×伊達暁×長塚圭史
SPIDERS INDEX#004伊達暁×伊賀大介×中山祐一朗
二村:僕は阿佐ヶ谷スパイダースは初めてで、新参者なんですよ。長塚さんとは
『ウィー・トーマス』(パルコ・プロデュース)の再演から、プロデュース
公演では何作品かやらせてもらっていますけども。何が違うってこともない
けど、今回はいわゆる長塚さんがイギリスから帰ってきて最初の作品ですか
らね。一番初めにワークショップを見させてもらったんですけど、今思うと
あのワークショップって、この作品の核に近いものがありましたね。こうい
う作り方があるんだなと思いました。ゼロの瞬間を見ているというおもしろ
さ。新鮮な経験でしたね。
長塚:とにかく、一番生なものを作品に取り入れようという思いがあったんですよ
ね。そのアイデアが複雑なものだったから、自分の頭の中だけで構築しよう
と思ってもなかなかむずかしかった。そこでワークショップをやろうと。ま
さにあのワークショップの中で骨子というか、考え方みたいなものが作られ
ていきましたね。
二村:脇道としておもしろかったというか、いきなり本題じゃないおもしろさ。
「ああ、ヨーロッパの香りだ」みたいな感じがしました(笑)。
長塚:(笑)。ワークショップでは何もない空間だったじゃないですか。その何もない空間で俳優たちが芝居を作っている光景は、このセットのアイデアの根っこにつながっているんじゃないかと。
福澤:今回は何を選択していくかを求める過程をとても重視した作り方ですからね。二村さんはその選択したものを受けて、どんなことをやろうかと思う立場だけど、僕は、演出家やプランナーがやりたいことが出た段階からディレクションして、どうまとめていくという立場。そういう意味では、請け負いみたいなことになりがちですけど、阿佐ヶ谷スパイダースではそうではなくて、「何をやりたいか、僕自身が納得するまでは動かない」みたいな関係でやらせてもらっていて。
長塚:いつもは最初からいてくれる諭志くんが、今回は稽古期間の途中から参加ということにして、ある意味僕らは放り投げられたんだよね。稽古終盤まで、稽古場にいるのは俳優たちと制作と演出助手だけでしたからね。
福澤:スケジュール的なこともあったけど、作品を作っていくプロセスを、僕ら演出部が牽引していくのではなくて、演出家と役者に委ねるというか、役者と一緒に作ってくれと言ったんだよね。役者と一緒にディスカッションして、そこから出たものだけを拾っていこうというやり方でしたから、周りのスタッフは相当焦ったと思います。
長塚:すぐ僕らは具体的な話をしちゃうんだけど、具体的なことは稽古の中でつかんでいきたかった。今回は具体的に決めるまでの時間を、諭志くんが引き延ばしてくれたのが、すごく良かったなと。
福澤:僕が稽古に参加してから少し経ったときに、演出助手の(山田)美紀ちゃんに、「発注しないと間に合わないから進行してくれ」と言われたんだけど、「まだまだ」と(笑)。そのときに、「今決めるとそれになっちゃうから、まだ圭史はねばっていいよ」という話をしたんだよね。リミットから考えていくのではなくて、ゼロの状態に立った位置で、それも選択肢のひとつだという意識の中で作業を引っ張ることができたから、その前のワークショップから来た流れが、とても有意義だったよね。
二村:結構度胸がありましたよね。長篠の戦いのような(笑)。
福澤:二村さんには申し訳ないんですけど、発注のリミットが過ぎて、素材のクオリティーがもし仮に下がったり、やれることの手がふさがっていったとしても、その選択をする意義があると思ったんです。そこで選んで構築するオブジェクトは、一日多いだけでも芝居にリンクしているものが生み出せるだろうと。役者がその空間を共有して、掌握することがどこまでできるかというか、そういうことのほうが重要だなと思ったんですよね。
二村:本当にそう思いますよ。あのときはちょっと焦りましたけど(笑)。
福澤:劇場に入って、これだけ役者が空間を掌握している装置との関係性って、なかなか築けないと思いました。構築していく段階から頭をつきあわせて考えて、装置の柱を自分たちで動かしたりして作っていった空間だからこそ、あれだけ扱いきれるというのはあるよね。
長塚:特にこの話は、みんな存在としてはとても不安定じゃないですか。だから、彼らがそこにきちんといられるのは、とても重要だったと思うんだよね。俳優さんたちはみんな嬉しかったと思うんだよ。本番の舞台に立ったときに、この舞台装置は助けてくれるって(笑)。最終的には、演出の僕と美術家の二村さんとの間にも、セットと俳優の間にも絆が生じていて。俳優が決めた動きを、演出部の諭志くんたちに渡すという作業をすることによって、俳優と演出部の間にも絆が生じる。これが連鎖していって、いろいろなつながりが生まれていったよね。何もないところから積み上げて行って、みんなで時間を共有したことは価値のあることだなと思ったけど、一カ月の稽古でやることではないね(笑)。このスタイルでやるときは、二カ月とは言わないけど、六週間は絶対に必要だよね。
福澤:それぐらい斬新な試みなんですよ、地味に見えてね(笑)。
長塚:このやり方ができたことは、阿佐ヶ谷スパイダースだけじゃなくて、演劇界全体にとっても良いことなんじゃないかな、とも思うんですよね。

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