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2016/08/19 UPDATE

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[鼎談] 松居大悟× 中山祐一朗×伊達暁 『イヌの日』上演台本をもらうまで

[鼎談] 松居大悟× 中山祐一朗×伊達暁 『イヌの日』上演台本をもらうまで

阿佐ヶ谷スパイダースの20周年となる今年、本公演として『はたらくおとこ』の再演が予定されているが、
その少し前の暑い夏の日、もうひとつスパイダースに関連した公演が行われている。
それは、松居大悟演出による『イヌの日』(2000年に初演、2006年に再演)の上演である。
事務所の後輩でもある松居大悟と、中山・伊達による、“この夏、一番暑い(かもしれない)鼎談”をお届けします。
※「イヌの日」=dog days。“夏の中で最も暑い日”の意。

―中山さんはこの間、稽古を観に行ったんですよね?
中山はい
松居初演や再演に関わった人から話を聞いちゃうと、それが正解みたいになると思って気をつけているんですけど、今もいろいろ緩やかに情報が入ってきていて。圭史さんと取材を受けたりしたら「あのときはこうだったんだよ」とか。
中山だから稽古を観に行ったとき、俺は一言も発しないほうがいいなと思った。
松居しかも中山さんが来たのが、孝之と洋介の配役を決める日だったんです。
中山あ、そうなんだ。孝之は、最初から目次(立樹)と決まっていたわけじゃないんだ?
松居(大窪)人衛くんとちょっと迷ってて、読み合わせて孝之が目次に、洋介が人衛くんになって。広瀬と中津も、読み合わせてみて広瀬を(玉置)玲央、(尾上)寛之が中津になりました。
―どうでした? 稽古を観て?
中山みんな基本的には真面目だからさ。まあ俺とかは、孝之のことしか考えずに芝居をやるからあれだけど……ちょうど稽古場でディスカッションをやっていて。結構みんな、広瀬と中津のことを気にして話してた。たぶん広瀬と中津って、すごく難しい役なんだよね。やっていることは幼稚だけど怖く見せないといけないし、そこに説得力と緊張感を持たせるのがとても難しい役。そこをみんなで考える時間を取っているんだなと思った。
松居僕もそこはみんなと一緒に考えたくて。「この戯曲のゴールはここだから、ここに行こうぜ」ということよりも、「これ、絶対みんなでやりたいから、みんなでやろうぜ」というモードにしているんです。「今、僕らがやるべき作品のゴールってなんだろうね?」という問いを、感覚的に共有してから、稽古に立ちたくて。
中山まあ、暴走するところは暴走したほうがいいと思うんだけど、中津と広瀬のことを、防空壕側を演じる人たちも考えてるのはえらいと思った。
伊達うん。
中山防空壕の中の4人は子供のままだからさ。俺らはもう、周りに迷惑かけて当たり前みたいな感じでやってたけど。でも、ラストのほうにある難しい感情とかは、中津と広瀬のほうに来るじゃない。でも、あれだけ話し合っていたら、今回はちょっと新しいなにかになるのかなって。演じてて難しくなかった? ラストのほうとか。
伊達難しいのかどうかは……、よく考えてなかった。
中山(笑)
松居今の段階では共感とかそういうことではなく、とにかくこの人たちは全員、自分が正しいと思っていて、ひたすら生命力が溢れているんだと考えながら、作ってます。
中山スタート地点はそれくらいがいいよね。バラバラでもいいから、とにかくスタートしてまとめあげるというか。防空壕側の人たちが中津や広瀬について話したことも、稽古を通じて大きく膨らんで、まとまってくるだろうしね。俺たちのときは……、最初から完本してないもんね?
伊達してなかったと思う。再演のときもしてなかった?
中山してなかったんじゃないかな。
伊達少なくとも、最後のシーンはなかっただろうし。
中山そうね。「次はこんな真面目なシーンになるんだ」と思った記憶がある。
松居圭史さんと話をしたときも、初演の台本はとにかく主観的に書いて、破綻していてもいいからガーッといったと。で、再演はそれを振り返って中津の人間性とかを重要視して、みんなの行動原理に筋を通したけど、そうしたら知性的になりすぎたと言われていて。で、僕は第三者的な視点から主観的にやりたいから、初演をベースにして、ちょっと再演の終わり方とかは手本にしているというか。
伊達上演台本は長塚が書いてるの?
松居はい。圭史さんからは、まず「なにがやりたいかを提示してくれ」と言われて、僕は「初演ベースで、再演の要素をこういうふうに入れたいんです」というのを提案して。それに対して圭史さんが「やりたいことはわかった。九頭ちゃんのキャラとかは違うから、そこは筋を通させてくれ」と手を入れてくれて。それで本をもらったんです。

みんな、どっちが正しいかわからない

―松居さんが、どうして自分が本番を観ていない『イヌの日』を選んだのか、その理由も聞きたいんですけど。
松居僕は福岡にいるときに『ポルノ』を観て。あれが自分の中でカルチャーショックだったんですよ。
伊達うん。
松居本当に狂ったことをしているけど、なにか説得されてしまうエネルギーがあって。その後、僕は東京に来て演劇を始めたんですけど、ああは作れないから全然違うものを作ってきたんです。それでゴーチに入るときに、阿佐ヶ谷スパイダースのアーカイブを見てて。中でも『イヌの日』が自分の中ですごくゾクッと来たんです。絶対に共感しちゃいけないけど、中津の感覚ってすごくわかる気がした。あとは『ポルノ』や『少女とガソリン』は実際に劇場で観てたから、そこに正解があるというか……、そっちに引っ張られたら全然やる意味がないと思って。
伊達なるほどね。
松居あと、座組のみんなで一緒に考えたいというのもあったんですよね。で、同世代とこの戯曲に挑みたいと思ったときに、劇団公演ではできない好きな役者たちーー玲央とか寛之と組んでやってみたいと思って。しかも『イヌの日』では、小5のときから15年間監禁している設定だから、登場人物がほぼ20代後半から30代前半くらいなんですよ。それもちょうど自分たちの世代だと思ったし、いろいろなタイミングが合いました。
中山稽古場に行って観ているときも、「孝之をやりたいな」と本当に思ったけど、でも、ここには混じれないなとも思った。この人たちは初演、再演を知らないゼロの状態からちゃんと作ろうとしているから。ちょっとでも初演、再演を知っている人は、言ってはいけないことがたくさんあるから相当つらいぞって。
松居経験者の意見はみんな聞いちゃうだろうし、それで演技も絶対変わってくるし。
伊達幸い、誰も観てない?
松居幸い、誰も観てないです。
中山それも面白いよね。しかも(村上)航くんという、俺たち世代の人が一人混じり込んでるから。
松居その分、初期衝動でガッと行くわけにはいかないというか。最初から台本があって、技術のある同世代の人たちが揃っているからこそ、一周回ってすごく強いものにしたいと思ってます。
伊達話し合いでは「15年も監禁できるわけない」という話になったりはしない?
松居「なんで中津は監禁したんだ?」みたいな話は結構してますね。
伊達外が『マッドマックス』みたいな世界になってるって、嘘をついている設定なんだよね?
松居そうです。でも本当に外が地獄だと信じているというよりも、15年間信じ続けたという事実そのものを、今は信じているんじゃないかとか。そういう話し合いをしてますね。
中山あとさ、東京だからか大丈夫な感じで暮らしているけど、放射能とかでドロドロという外の世界が、今は本当になっているかもしれないということに、びっくりしたんだけど。
松居外が地獄というのが嘘じゃなくなってきている。みんな、どっちが正しいかわからなくなってるんですよ。だから中津が本当に正しかったかもしれないし。


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